死ね坂口安吾

 

坂口安吾の「堕落論」を読んでいると、「教祖の文学」という話の中で、坂口安吾宮沢賢治の「眼にていう」を褒めそやしている箇所があり、それが私の気分を害したのでここに一応記録しておく。

 

私も宮沢賢治の詩集は小学生時代から愛読しており、特に「眼にて言う」と初めて出会ったときには、なんと素晴らしい詩だろうと思い、何度も繰り返し読んでいたのだ。

 

その「眼にて言う」を、多作の賢治の作品群の中からなぜこうドンピシャで選んでしまったのか。

坂口安吾は当たり前だがこれを私が生まれるよりも前に書いたのであり、つまり私がこれからどうあがいてもこの人より先に評価していたということにはなり得ないのだ。仮に私が誰かに「眼にていう」の素晴らしさについて語ろうものなら、こいつはひょっとして坂口安吾とやらの著作を読んだために自分も真似ているだけなのではないか、という疑問を持たれかねないのだ。

 

なんたる屈辱、なんたる侮辱。許すまじ坂口安吾